【単独猟のポイントは記事の最後にMEMOをまとめています。本文の太字部分と連動させています】
2021年5月某日
GWのせいか獲物たちも休暇で不在らしい、そんなことを呟いて山を巡ります。
猟場開拓のつもりで攻めてみたものの、足跡や糞の痕跡が少なくて捜索するエリアを間違ったかなと弱気になります。
やっと見つけた痕跡は鹿の抜け毛だけです。

そろそろ帰るか、そう思って山を下りる気持ちになったとき微かに沢の音が聞こえました。何気なく沢をのぞき込むと思いがけない急斜面。沢まで70mはあるでしょうか。
猪親子が沢沿いに上流へ向かって歩いています。子はウリ坊より少し育ったサイズ。
捜索していたわけではありませんが、すぐに脳内スイッチが入ります。
沢の水が流れる音でわたしの足音が消えるので、忍び寄るにはいい場所です。
親子と平行に上流に向けて進み、下り斜面に突入します。
さあどうやって距離を詰めていこうか、と意気込んだら想像以上に傾斜が急。
獣道も見当たりません。腰の高さの倒木に遮られています。
倒木の先に回り込むだけのようで足場が悪くて数メートルの移動で獲物にバレてしまう可能性があります。
下の画像、右が沢。猪親子が沢沿いを離れて半時計回りに登っている様子が、立木の隙間からチラチラと見えています。

ここで撃つ、そう決めて立射で構えると、これから猪が通りそうなルートを茂った葉っぱが覆います。視点の高さを変えるために膝射で構え直すと射線が通ります。
膝射は練習していないので苦手です。そのうえ右足が下り斜面で不安定です。
左膝の上で左腕を支える姿勢も難しいので、射撃場ではやらない(やれない)地形に合わせた膝射姿勢で構えます。
・上半身を左腿にべったりくっつけて左膝に左脇に被せる。
・右足は内股気味、膝を曲げて下り斜面に放る。
・下り斜面に向けて構えるので左アキレス腱が伸びた状態で重心は左足裏に乗せる。
先頭の親猪が木々の隙間からチラチラ見えています。できる限り視認しやすい隙間で撃ちたいのですが、固めた膝射の体勢で向けられる銃口の角度は限られています。
画像の赤い矢印の先に来たら撃つと決めて待つこと数秒。
さっき沢沿いで見た姿よりほんの気持ち距離が近づいた様子。目測60m。
左の立木に隠れると撃つチャンスがなくなる。肩付けを意識して上半身を固めて、ネックを狙い思い切りよくトリガーを引く。
ガラガラと音を立てて親猪が足掻きながら斜面を滑り落ちていく。
遅れてきた子猪は驚いた様子で奥の上り斜面に駆け出した。
茂みに隠れて見えないので、子猪は諦めて転がり落ちた親猪を探しに行くかと思ったら奥からウリ坊が戻ってきた。
親猪が転がり落ちた沢に向かっていこうとしている。
排莢、装填。
同じく目測60m。子猪のヘッド狙って発射。
跳ね上がる様子が見えて、ヒットした!と思ったらそのまま確かな足取りで駆け下りていく。
もう足音を気にしなくていいので、自分もできる限り早足で斜面を降りていく。沢の音が間近に聞こえるまで降りる。
ガサガサと駆けまわる音が聞こえる。
姿や音をキャッチできていない親猪は獲れたかどうかわからないまま子猪と対峙。
沢近くまで下った子猪がプギャープギャーと鳴き続けていたが、ふとした瞬間に真正面からこちらに向かって走ってきた。
小さいものの顔面が崩れて血を垂れ流して勢いよく走ってくる。思わず怯んだ。
子猪もわたしの存在に気付き、旋回気味に斜面を駆けあがる。
トメる事を優先してネックを狙い、撃ち上げ。ようやく動きが止まった。

今から慌てて親猪を探しても仕方ないので、見えている子猪を仕留めた事を確認します。
斜面を登り回り込んで見るともう微動だにしません。

一発目のヘッドショットは顔にヒットしていたのですが、目の下の鼻筋を左側面から右側面に真横に貫通していて、致命傷になっていなかったのです。
追い矢は左足を飛ばしてネックにあたっていました。
離れて撃った場合は弾が抜けた穴も着弾と同じサイズの弾痕になりますが、近距離でヒットしたせいなのか、左足にヒットした際に弾の形状が変わったのか、弾が抜けたネック右側は広範囲に炸裂していました。

開けた場所なので、親猪を探して戻ってきてもすぐに見つけられるでしょう。
親猪が転げていった斜面に向かうとすぐに沢に浸かっているのが見えました。

少しずつ慎重に下って行きますが、雨で流されてきて間もないような不安定な石が多く転びそうです。

随分近づいたな…と思って喜んだら足元がなくなって3mほど垂直に。回り道します。

結局、こんな急斜面しかなかったので、鉄砲の負い皮を斜めにかけて両手使って降りてなんとか親猪に到着しました。

たてがみのあるいいサイズのメス猪です。この時期の子連れの割には脂もあるような体つきです。
着弾は狙ったネックから若干後ろのバイタルでした。猪が歩いていたので若干ずれたようです。
Red Bird competitionは射的用なのでField(狩猟用)と比べるとストッピングパワーが弱いと聞いた事もあるのですが、致命傷を与える位置にあたれば仕留められるのかもしれません。
これがFieldで前足や背ロースにヒットしていたら半矢だった可能性があります。
自分の猟スタイルではイメージ通りに弾が飛ぶ(=精度)のが大切だと感じます。




普段は沢で冷やしませんが、沢にいるので腹を開いて冷やします。



【MEMO】
・沢沿いは忍び寄りのチャンス。
水の流れる音でこちらの足音がかき消されるので多少の音が鳴っても獲物が気付かない。雑はダメだが大胆に距離を詰めるチャンス。
・射撃姿勢の選択肢が必要。
姿勢の安定のためだけではなく、目線の高さを変えることで射線が通る可能性がある。立射(あるいは膝射)だけではクリアできないシチュエーションに備えて大きく高さを変えられる姿勢を練習しておきたい。
・親子は親から撃つ。
多くのハンターが言及している通り、親子でいたら親から撃つこと。子から撃つと必ず親は逃げ去ってしまうが、親から撃つと子はその場に留まったり、戻ってきたりする。子も撃つチャンスが生まれる。親がいなくなると子の生存率は下がるそうなので、駆除の成果としても期待できる。
・ヘッドショットに必要な精度とは。
前回の記事で「ヘッドショットを狙うべき」と言ったのは誰だろう。
記事のタイトルに「鼻筋」を選んだのは自戒のため。
ヘッドショットはあくまで脳幹・脳漿にダメージを与えないといけない事が理解できた。鼻筋を撃ち抜いても即倒しない。距離と高低差と子猪のサイズを考えるとヘッドショットを選択した判断には自分の技量に過信があったと言える。
【諸条件】
・鉄砲:ボルトアクション銃20番
・照準:スコープ vixen1-6X24
・弾種:Redbird competition
・弾数:3
・距離:目測60m
・獲物:猪2頭 -親:バイタル側面1発 子:鼻筋1発→ネック1発
・目的:有害鳥獣対策
※当ブログでは、狩猟と有害鳥獣の駆除で異なる表現を同一に扱ったり暗喩・直喩を用いたりする場合があります。作業工程の記述を省略している場合もあります。いずれの場合も法令に則り適切に行動・処置していますが、誤解を招く表現は速やかに修正しますので「お問い合わせ」よりご連絡ください。
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