【単独猟のポイントは記事の最後にMEMOをまとめています。本文の太字部分と連動させています】
2021年4月某日
朝から歩き始めて昼食の時間です。
鉄砲を左手のY字型の木に立てかけて、ほどよい岩に腰かけます。
目の前には高低差20mの谷間と向かいの尾根の斜面が広がっています。荷物を降ろしてリラックスです。
のんびり気分でモグモグ食べていると向かいの尾根中腹でバンビがひょこっと登場。
胴体半分から下は地形の凸凹で隠れていますがバイタル上部・ネック・ヘッドは見えています。
と言っても距離は目測で60mあります。小さいバンビが一層小さく見えます。
握り飯を脇に置いて、様子を見ますが構えるまでもありません。
5分ほどモグモグ食べていると親鹿がやってきました。
さすが親鹿すぐにわたしの存在に気付きます。じっとこちらを見ています。
親鹿はバイタル下部が地形に隠れているものの、見える範囲が大きいので狙えます。
握り飯を飲み込んで、鹿を視界にとらえたまま中腰蟹歩きの姿勢でゆっくりと左手に立てかけた鉄砲を手に取ります。
警戒されないよう、引き続きスローで岩に座りなおして上半身のみ立射の姿勢をとります。
スコープをのぞいたその瞬間、親鹿が身を屈めて凸凹地形の凸の裏に消えました。バンビもぴょこぴょこと続き消えました。
バンビは最後までこちらに気付いていませんでした。
昼飯は短時間で終えて集中力の回復を感じたら移動を再開します。
木の密集度が低いエリアで忍び歩きしていると、100m以上先ですっ、すっとわずかに動く獲物の影に気付きました。二頭、鹿の親子のようです。
二頭は餌を探してそぞろ歩きしながら大きな円を描くように移動しています。
自分は大きい立木の後ろから覗いているので2時→12時→9時まで回り込まれたときに見づらくなりました。
顔だけ出していては見えなくなったので思い切って体ごと右に出ます。
木々が二頭を隠します。遠近の異なる木々の重なりで鹿が隠れると次に視認する時には思わぬところから登場するため集中しづらいです。ぴったり一緒に移動してくれるわけでもありません。
動きがない自分の身体とは対照的に、視線はグルグルと鹿を追いかけます。
このまま9時の方角に抜けてしまうと木々が密集しているので見失ってしまいすが、数歩でも歩み出れば鹿にバレてしまうでしょう。
運に任せて、撃てるエリアに戻ってくることを願って待ちます。
9時の方角から時計の中心に移動してきました。
子鹿がわたしの正面70m撃ち下ろしの位置に見えます。わたしは6時の位置取りです。
胴体を大きな木の幹に隠していてネックと顔が見えています。見えてはいますがスコープ越しでも顔もネックも小さいので胴体が見えるまでもう二歩前に出て欲しいところ。
そう思って構え続いていると、子鹿の奥にすっと親鹿が立ちました。

何も気にせず3時の方向を見やっている子鹿と違って、親鹿は並ぶと同時にわたしに気付き耳を立て様子を窺っています。親鹿に気付かれた以上そこから近づいてくることはないでしょう。70mがこの遭遇の最短距離になりました。
幸い、子鹿を狙って立射姿勢で撃つタイミングを見計らっていたのでわたしに新しい動きはありません。とは言っても、耳も目もわたしをとらえて身じろぎしながら観察しているのがよくわかります。
親子の狙撃は親を撃つのがセオリーです。
親を撃たれた子は逃げ惑い、近場に伏せたり、戻ってきたりすることがあります。
逆に子を撃たれた親は必ず逃げると言われています。
セオリーのいいところは短時間で判断が決まることですね。
上下にヘッド・ネックが並んでいるので、上下にぶれても致命傷になる可能性が高まりました。
親鹿が落ち着かなくなってきた。セオリー通り親を狙う。
今までで最も遠い70m。50mゼロインだが撃ち下ろしなのでドロップと相殺するだろう。これ以上は考えない。
一発装填、次弾一発を小指と薬指に挟む。息を吐き、レチクルのセンターを親鹿の鼻筋に合わせてトリガーを引く。
被弾した親鹿は腰が砕けるように崩れ落ちました。
子鹿は真横で倒れた親鹿に驚いて跳ね飛ぶと、そのまま9時の方角へ一瞬で消えてしまいました。
鹿は倒れて動いていないはずですが、倒木や地形の凹凸のせいで見当たりません。100mは歩いて行きすぎたな、、というところでUターンすると親鹿が周囲の枝に隠れるように埋もれていました。
近づくと血が見えました。
狙撃時にヘッドとネックしか見えてないのでどちらかにヒットしているはずです。

周りこむと顔面に着弾して後頭部に抜けていました。

接写を見なおして気付いたのですが、血は着弾側から流れ出ていて、弾が抜けて出た後頭部には血痕はありませんでした。
あたった勢いで吹き出したわけではなく、低い方に流れ落ちているようです。
本来は射撃用(精度重視)の弾なので損壊は少ないようです。

鹿相手に初のヘッドショットとなりました。
鼻筋を狙っていたので想定どおりのヒットです。
さて、猪を含めてヘッドショット数回ですが、まるで何度もやったことがあるかのような口ぶりで書いていきますのでご注意ください..笑。
ヘッドショットは見た目がきつく一見かわいそうですが、即死するため苦しめない意味ではベストな選択です。
食肉として活用する場合も最大限に肉がとれます。
あくまで自分自身のスタイルとしての考えですが、技量が伴うならヘッドや脊椎を撃つべきで、相応の技量を身に付けられるよう練習が一定量は必要になると考えています。
70mのヘッドショットは運に助けられていますが、それでも自分の50m立射グルーピングが分かっているから撃つのであって、イチかバチかで撃っているのではありません。
出猟の少し前に練習した立射50m、縦長のグルーピングで手刀サイズです。
頭の中にはこの赤枠が集弾イメージとしてあります。

猟場のシチュエーションに赤枠を重ねます。
射撃場より20m遠く、水平でもないのでグルーピングは膨らむ可能性はありますが、獲れるイメージがわきます。

数日前にTwitterで銃猟の大先輩 勢子izmさんと弾についてやりとしていました。
勢子izmさんから「レッドバードコンペはネックやヘッドはいいが、心臓や肺付近だと結構走られる」と教えて頂いていたので、ナイスタイミングでした。


この鹿は後ろ脚を両方吊るして解体しました。

解体中に見慣れない内臓がありました。
ハラコですね。



さて、ここからは食肉です。



近くの枝に数枚のビニール袋を吊るしておきます。
部位別に分けやすいです。肉が重なりづらいので放熱もしやすいです。

ちなみに初めておっぱいを食べましたが、下処理が不十分で大変なことになりました。



【MEMO】
・射撃場でグルーピングを確認する事で、猟場で撃つ/撃たないの判断材料になる。
外せば獲物がハンターを警戒して捕獲しづらくなる、と考えています。
撃つならあてるべき、あてるなら回収すべき、と自分に言い聞かせています。
自分が思い描く猟のスタイルを実現するためには、自分の射撃の腕(=グルーピング)を把握して、獲物を仕留める距離まで近づく狩りの腕を向上させます。
・獲物を苦しませないためにも技量向上に努める。
即倒ならすぐにトメるので苦しみの時間はまだ短いですが、あてて走らせてしまう撃ち方は捜索時間の分も長く苦しませます。
仕留めるので結果は一緒ですが、できる限り小さな苦しみで済ませたいです。
わたしの思い描く単独忍び猟のGOOD/BADはこんな感じです。
【GOOD】 一発即死 >>> 一発即倒 >>> 二発即倒 >>>>> 半矢を捜索して死亡確認 >>> 半矢を捜索して生存確認 >>>>>>>> 半矢で未回収 【BAD】
技量を誇るのではなくて、技量によって良いと思う何かをなせる事を良しとしたいです。
【諸条件】
・鉄砲:ボルトアクション銃20番
・照準:スコープ vixen1-6X24
・弾種:RedBird competition
・弾数:1
・距離:目測70m
・獲物:鹿1頭 -ヘッド
・目的:有害鳥獣対策
※当ブログでは、狩猟と有害鳥獣の駆除で異なる表現を同一に扱ったり暗喩・直喩を用いたりする場合があります。作業工程の記述を省略している場合もあります。いずれの場合も法令に則り適切に行動・処置していますが、誤解を招く表現は速やかに修正しますので「お問い合わせ」よりご連絡ください。
………………………………
面白かったらバナーをクリックしてください。ランキングがあがります。
あなたが応援してくれたらブログ更新します。

