※猟銃で有害鳥獣駆除を行った画像を加工せず掲載しています。
抵抗のある方は閲覧しないでください。
【単独猟のポイントは記事の最後にMEMOをまとめています。本文の太字部分と連動させています】
2021年5月某日
猟場狙撃の腕を磨く気持ち、新たにしました。そういう猟でした。
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過去に獲物を見かけたようなエリアの近くを通る場合は、念入りに周囲をチェックします。
尾根を登り切る少し手前、電子イヤマフで尾根の向こう側から草を蹴る音を拾います。
向こう側は広くなだらかな斜面で、その先しばらく進むと川が流れています。
水場から近く餌も多く、獲物にとって魅力ある場所らしいです。ただ、他にも似たようなエリアはあるので、わたしには分かりませんがここには他にも誘引する理由があるのでしょう。
木に隠れながらそっと斜面をのぞき込むと鹿が4~6頭いるようです。
手前に親子がいて、奥に数頭チラチラっと見えた気がしましたが、ちょうど移動するタイミングだったようで奥の川方面へ少しずつ群れが移動します。
親鹿と子鹿が離れてくつろいでいます。
より手前にいるのは親鹿です。子鹿は暗がりにいることもあって狙えません。
親子の獲物を撃つなら親から撃つのがセオリー。
立ったまま木に委託して親鹿を撃ちたいですが木々が射線を遮ります。
木で身を隠す事をやめて斜め前に数メートル歩を進めます。
緩く右に下る地形、膝射しようと屈んだものの右膝を地面について構えられません。
右足のくるぶしから脛、膝まで地面につけ、内股に倒してバランスをとります。
スコープ越しに鹿の全身を見て機を待ちます。
鹿は右半身を見せて立ち、顔をぐるりと胴体に回して毛繕いを始めました。
身体は右側、顔は左側が見える状態です。
目測は50m、射撃場の的と同じ程度の距離感覚。
立ち止まっていて、ヘッドショットを狙える。スコープは3倍のまま。
右手の薬指と小指には次弾を用意。
息を吐いて、ケラレ、頬付け・肩付けを意識の中でチェック。
トリガーを静かに引くと即倒。

少し痙攣しているのか、斜面をズルズルと滑っていってるようにも見えます。
排莢し、薬室に二発目を入れますがボルト操作せず(閉鎖せず)鹿の動きに集中します。
身動きしなくなった様子を確認して弾を抜き、獲物のもとへ進みます。

鹿の場所へ近づいていきます。
気のせいでしょうか。あたった位置から奥へ移動している印象を受けます。

さらに近づくとようやく見えてきました。

枯れた倒木にべったりと血糊が残っています。
やはり最初の出血から移動しています。

歩み寄ると鮮血が広範囲に広がっています。
遠目に脳漿が見えているので即死のはず。痙攣で斜面をずり落ちて血糊を残したようです。

血糊を避けて回り込むと背中にケガらしきものが。

撃ったのは一発。ヘッドを抜けてロースにヒットしていました。

左顔の付け根にヒットして

右顔から弾が抜けて

ちょうど緑の葉っぱが付いたあたり。ロースまで。

ヘッドショットはバイタルやネックと比べてグロテスクです。
しかし、獲物が苦しみを感じる時間はありません。
駆除の結果に変わりはありませんが、せめて苦しませないように。


解体作業がしやすい直径4mのボウル状の地形まで移動して、親鹿の後処理をします。
元々獲物が集まりやすい場所であること、解体の臭いが漂うこと、縄張りの中でガサガサと作業している存在に対する興味、バンビやウリ坊なら親の庇護を求めて戻ってくる、、
理由はいくつかあるのでしょうが解体していると自ら射程圏内に入ってくる獲物がいます。
頭では理解していますが、経験値が伴っていません。
作業中、ふと視界の端に動くモノをとらえました。
人なら挨拶と説明が必要。獲物なら狙撃対象となるか見極めが必要。
そっと見上げると、正面を晒して子鹿が木陰からこちらの様子を見ています。
後ろ半身は隠れて見えません。やや斜め上60m。
クイックな動きで反応されないよう、それでいて緩慢な動きで機会を逸しないよう、ムダな動きの排除を意識して最短距離で窪みに置いていた鉄砲を手にとります。
解体場所にボウル状の地形を選んだことが裏目に出ました。
安定した射撃姿勢がとれません。
立射には爪先側が高くなり過ぎます。
膝射ではボウル状の地形の壁で鉄砲を構えられません。
とっさに両膝立ちで構え、安定を確認。装填。スコープに鹿をとらえる。
親鹿より小さいし遠い。先に気付かれているのでいつ逃げ出すか分からない。
などと考えたかどうかというタイミングで、鹿の動き出しを感じてバイタル正面に向かって発射。
次の瞬間、小鹿は駆け出しました。
木々の間を飛ぶように移動して一瞬で見失います。
失中か半矢か確認に行く前に、親鹿の周囲の木にパラコードを結びメモを残します。
小鹿がいた場所あたりを見渡しますが血痕はありません。
ただ、気のせいか臓腑の臭いがします。
最寄りの獣道まで痕跡がないか地面をじっくりと見て進むと、蹄で蹴った跡があるものの途切れています。
今来た獣道を戻ると、最後に見た蹄の跡まで帰ってきてしまいました。
休憩のために下り斜面に向かって座り、ふと見下ろすとほぼ崖のような場所に血糊を見つけました。地面ではなくて細い木です。
獣道を外れて斜面を駆け下りたか転げ落ちたのでしょう。

傷を負っていなくても敢えて登る斜面ではないはずです。
さらに下ります。三点支持でなければ危ないので鉄砲をたすき掛けにします。
周囲に独特の獣臭が漂っています。
解体していると腸が放つ消化中の内容物を思わせる臭いです。
嫌な予感が頭をよぎりますが、トラッキングには有益な情報です。
地面(平面)ではなく崖(立体)で血痕を探す経験が初めてでなかなか見付けられないので、臭覚を意識して臭いの強い方向を探します。
そうすると崖を下り終わる場所の一本の木に複数の痕跡があります。
恐らく、左の崖から木に向かって飛び降りるようにぶつかって落ちたのでしょう。
内臓の臭いが立ち込めています。

高い位置の血痕はわたしの頭より高く、地上2m以上あります。
崖から落ちて木にぶつかってずり落ちたのでしょうか。想像できません。

血痕はないのですが、内臓の臭いが強くなる方へ進み続けると小鹿が絶命していました。トラッキングと崖を下りるために時間を費やしてしまい、銃創にはハエがたかっています。
腸を撃ち抜いていて、胴体の反対側に弾が抜けています。
どちらの銃創からも内容物がはみ出ていて、独特の臭いを放っています。

ここで一つの疑問がわきます。
正面からバイタルを狙って撃ったのに、胴体の真ん中に着弾しています。
銃創をよく見ると、弾は皮を削いで鋭角に入っています。

狙ったイメージは青、実際の着弾は赤。



年末の射撃練習でも右にポーンと飛ばす弾がありました。

条件が整えばヘッドショットできるものの、整っていなければ胴体を撃ち抜いて走らせてしまう。その程度の技量だと痛感しました。

単独忍び猟で1日に二頭獲れば悪くない、というより後処理を考慮すると二頭が上限という気がします。よく獲ったと言っていいはずですが、糞と血をまき散らして崖を転げ落ちた鹿の苦しみを思うと糞みたいな自分の未熟さに嫌気がしました。
猟場の射撃技術を向上させないといけません。
【MEMO】
・解体作業中は別の獲物が寄ってきて射程圏内に入る場合がある。
理由は分かりませんが、経験則から山中の解体作業中には別の獲物が寄ってくることがあります。後日投稿しますが、猪が目の前までやってきたこともあり、獲らないとしてもコンタクトを回避するために注意を払っておきたいです。
・切り立った斜面、崖を下りる時は三点支持を。
三点支持は手足の合計4本の内、3本を確実に地面などで保持し安定させて移動することを指す、と思っています。普段はスリングを肩にかけていますが、足場が悪いときはたすき掛けにして両手をフリーにします。
たすき掛けにすると射撃姿勢に移行するまで時間がかかるので忍び中は使っていません。
・理想の射撃。不完全な射撃。
即死・即倒が理想的な射撃。回収が容易。
胴体を撃ち抜いて走らせると苦しませるし、未回収のリスクが発生する。
【諸条件】
・鉄砲:ボルトアクション銃20番
・照準:スコープ vixen1-6X24
・弾種:RedBird competition
・弾数:2
・距離:1頭目:50m(膝射) 2頭目:60m(両膝立ち射)
・獲物:鹿2頭 -1頭目:ヘッド 2頭目:胴体
・目的:有害鳥獣対策
※当ブログでは、狩猟と有害鳥獣の駆除で異なる表現を同一に扱ったり暗喩・直喩を用いたりする場合があります。作業工程の記述を省略している場合もあります。いずれの場合も法令に則り適切に行動・処置していますが、誤解を招く表現は速やかに修正しますので「お問い合わせ」よりご連絡ください。
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