単独猟 第14回 “苦悶”            (猪) 犬なし / スコープ&ボルトアクション銃

【単独猟のポイントは記事の最後にMEMOをまとめています。本文の太字部分と連動させています】

2021年1月某日 

前回、中型サイズの猪を2頭見送りました。鹿や猪を限定して獲れるほどの腕前ではないです。目の前にきたチャンスをきっちりとつかめるようにします。



朝から歩き始めて昼食の時間です。
鉄砲を左手のY字型の木に立てかけて、ほどよい岩に腰かけます。
目の前には高低差20mの谷間と向かいの尾根の斜面が広がっています。荷物を降ろしてリラックスです。

のんびり気分でモグモグ食べていると向かいの尾根中腹でバンビがひょこっと登場。
胴体半分から下は地形の凸凹で隠れていますがバイタル上部・ネック・ヘッドは見えています。
と言っても直線距離は目測で60mあります。小さいバンビが一層小さく見えます。
握り飯を脇に置いて、様子を見ますが構えるまでもありません。

ざわつく気持ちを抑えつつ5分ほどモグモグ食べていると親鹿がやってきました。
さすが親鹿すぐにわたしの存在に気付きます。じっとこちらを見ています。

親鹿はバイタル下部が地形に隠れているものの、見える範囲が大きいので狙えます。
握り飯を飲み込んで、鹿を視界にとらえたまま中腰蟹歩きの姿勢でゆっくりと左手に立てかけた鉄砲を手に取ります。
警戒されないよう、引き続きスローで岩に座りなおして上半身のみ立射の姿勢をとります。

ぐっとスコープをのぞいたその瞬間、親鹿が身を屈めて凸凹地形の凸の裏に消えました。バンビもぴょこぴょこと続き消えました。
バンビは最後までこちらに気付いていませんでした。

昼食はいつも握り飯だけです。
短時間で終えて集中力の回復が感じられたらすぐに移動を再開します。


沢の流れる音を右手に聞きながら歩き続け、切り立った崖から水が細く流れている場所で折り返すことにします。

前方に違和感のある黒岩が埋もれています。
二度見するとでかい猪です。寝ています。

目測50m。手前に木があるので半身見えませんが撃てる距離です。
ただし、手前の葉っぱや枝に隠れて左と右のどちらが頭か分かりません。


全身が見える場所まで移動しようと右に歩くと何かが動きました。
しばらく止まってじわりと近寄ります。するとしっぽか耳が動いています。
半分覚醒しているのかわたしの足音に反応している可能性があります。

目測40mまで近寄りました。膝射の姿勢で狙いをつけます。
体半分が埋もれているので起き上がるタイミングを待ちます。

風がすっと吹いたあとおもむろに猪が立ち上がりました。
空に顔を上げて何かを嗅いでいるようにも見えます。

もしかするとわたしが風上で猪に匂いをキャッチされたのかもしれません。
キョロキョロして歩き出したので横顔に向けて撃ちます。

ひっくり返り、こちらに腹を見せています。
前足は宙を掻いています。このまま絶命するイメージが脳裏に浮かびます。

しかし現実は違いました。
左の斜面に倒れこみ滑り落ちたところを見ると走り出しています。

沢に向けて瞬く間に飛び込んで行って一瞬で見えなくなりました。
急いで後を追います。

派手に走っているので跡が残っていると期待したのですが、背の低いシダが生い茂っていて地面が見えません。
見えないどころか斜面が急過ぎて追えません。途中で肩にかけたてっぽうを斜めに担ぎなおして探しますがうまく歩けません。

見える範囲にいるとも思えず、何より猪を追いたい気持ちが萎えるほど険しいです。
何とか50m四方を探しましたが足場が悪く滑落しそうです。

猪がひっくり返っていた場所に戻り血糊を探しますが少量です。
頭を狙った弾はおそらく首元か背中に着弾していて、血糊が周辺の地面に落ちる前に移動してしまったようです。

足跡も血糊もない急斜面を追うのは限界があります。

じわじわとある思いが募ってきます。


斜面に両手と膝をついて立ったまま休憩を取ります。

息が整ってくると沢の音が聞こえるようになり、受け止めました。
大物猟で初めて半矢を出してしまったという事実を。

山に入るなら見つける、見つけるなら撃つ、撃つなら獲る。
そういう思いでやっていました。

急斜面を探した疲れに悔しさも交じって手足が戦慄いています。
こんな状態で猟を続行するのはよくないと判断し、下山を決めました。

気が付けば日が傾いています。
折り返してあまり経っていないので、下手すると下山後半で真っ暗になる可能性があります。足音を気にせず早足で山を下ります。

途中、2頭ほど鹿に鳴かれましたがもう見向きもしません。
派手に足音を出してズンズンといきます。

そうすると、真正面20mの距離にメス鹿が登場。
正面から走ってくる人間に面食らっています。

絶好のチャンス、しかしこの時間に獲っては太陽の見えるうちに帰れなくなります。
装填してないことを確認して、ネックに向けて空撃ちします。

カチンと音がしても鹿はこちらを見て戸惑っていますが、ピャアっと鳴いて跳んでいきました。



【MEMO】

・休憩中のチャンスに備える。
適切な休憩は集中力を維持するために必要だが、見つけたら撃つのだから射撃体勢がとれるように鉄砲の位置、姿勢を考えて休憩する。

・二の矢を備える。
「一撃必殺」に拘るのは良いが「二の矢を備えない」という意味ではない。
初矢で仕留める集中力で撃ちながらも、仕留められなかった場合に備えていなければいけない。

【諸条件】

・鉄砲:ボルトアクション銃20番

・照準:スコープ vixen1-6X24

・弾種:Dupo 

・弾数:1

・距離:目測40m

・獲物:猪1頭-半矢

・目的:有害鳥獣対策

※当ブログでは、狩猟と有害鳥獣の駆除で異なる表現を同一に扱ったり暗喩・直喩を用いたりする場合があります。作業工程の記述を省略している場合もあります。いずれの場合も法令に則り適切に行動・処置していますが、誤解を招く表現は速やかに修正しますので「お問い合わせ」よりご連絡ください。

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