【単独猟のポイントは記事の最後にMEMOをまとめています。本文の太字部分と連動させています】
2020年12月某日
以前、鹿の群れを見かけたポイントに向けて尾根の始まりをいくつか横断します。
入山から30分経ち、立木が数本だけのほぼオープンスペースで休憩がてら低めの尾根を見上げていると一頭のメス鹿が尾根を越えて緩やかな足取りで降りてきます。
距離は40m。
できることなら立木に身を隠して迎えたいのですが、互いに丸見えの位置関係なので半歩でも移動すれば即バレてしまうでしょう。
偶然にも左足を前、右足を後ろに肩幅に開いて立っているので足を動かさず立射の姿勢に移れます。少しでも動きたくないのでアドバンテージです。

ジグザグに降りてくるメス鹿の顔とわたしの間に立木が入り、わたしの姿が見えなくなった隙に左手をスローモーションで負い皮に移動させ、上半身をゆっくりひねりながら肩から外します。
またメス鹿が顔を出しました。ジグザクに降りてきて立木と重なるタイミングを棒立ちで待ちます。
重なりました。右手でグリップを握りしめ、にじり寄るように左手を先台へ進めます。静かに鉄砲を折り、装填、静かに閉鎖します。しかし力が弱すぎて閉鎖しません。距離は30mまで詰まってきています。
再びメス鹿が顔を出しました。全身が木になったつもりで棒立ちになります。
また立木に重なりました。互いの顔は見えません。もう20mありません。鉄砲をもう一度閉鎖しなおします。小さくキンと金属音がするものの気付かれていません。ゆっくりと鉄砲を構え、頬付けするかどうかというタイミングでメス鹿が顔を出しました。
わたしに気付くと、ハッとした素振りもなく身を翻して降りて来たばかりの斜面を軽やかに5mほど駆け上がります。頬付けしたわたしの視線は照星越しにメス鹿を追っています。トリガーは引き絞ってあり遊びはありません。
メス鹿が中腹で立ち止まり振り返った瞬間にトリガーを絞り切って撃ちました。お盆で飾る精霊馬のように4本の足が伸びたまま固まり、もんどりうちながら斜面を落ちてきます。倒木に引っかかって止まりピクリとも動きません。近づいてネックの着弾を確認しました。

自家消費のために解体します。近くの平らな場所に短い枝を残した立木があったので移動します。メス鹿の後ろ足にワイヤーを通し、持ち上げて枝に吊るします。
横の枝にビニール袋をぶら下げて枝肉を入れます。外気の温度が低いので冷えます。水にも土にもつけないので猟場の解体としては衛生的な方でしょう。

より良質な肉にするために、血抜きについて詳しい方(プロハンター)に教えていただきました。次は試してみます。
【MEMO】
・鹿は素早く動くものや小刻みに動くものに鋭く反応する。丸見えで30~40mの距離でも全く動きを見せなければ気付かずに獲物から近寄ってくることさえある。スローモーションは有効な選択肢の一つ。
※自信がないので走る獲物を撃たないが、それにあてるハンターには別のアプローチがあるのだろう。
・鹿は逃げる途中で立ち止まって振り返りこちらを確認する場合がある。射程圏内で立ち止まることもあるので、走る鹿を撃てないハンターは立ち止まりを狙ってもいい。立ち止まりは数秒なので走る間も狙い続けること。
もちろんそのまま走り去ることが多いので見送りはよくある。気にしない。
※失中を気にせずダメ元で撃つ行為は自分のスタイルではない
・単独猟で立ち止まって小休憩とる場合、そのまま射撃体勢に移れるスタンスで休むこと。座って休憩なら膝射や座射の姿勢で、そのまま構えられる位置に鉄砲を置くこと(当然、脱包状態で)。
昼食をとる場合も同様(第14回参照)。
・外気で冷ましているが肉の味は全く問題ない。沢水の汚染や雑菌について調査していないので食肉をさらさないのが無難。水道水による冷却も避ける。
真夏の駆除だと外気で冷めないため消費自体をやめるか、ビニール袋に入れて沢水に浸けるのが正解かもしれない。
・吊るして解体したい。作業しやすいし土の接触がなく衛生的。紹介している吊るし方は軽量の獲物であれば数分でできる。ロープワーク不要の初心者向け。
注意点として枝の付け根にかけること。付け根にかける前に、枝の先や中ほどにかかって獲物の重さが乗ってしまうと折れやすい。
【諸条件】
・鉄砲:上下二連スキート用12番
・照準:リブ+照星(光学機器なし)
・弾種:Monolit
・弾数:1発発射-1発命中(ネック)
・距離:目測25m
・獲物:鹿(メス)-回収済
・目的:有害鳥獣対策
※当ブログでは、狩猟と有害鳥獣の駆除で異なる表現を同一に扱ったり暗喩・直喩を用いたりする場合があります。作業工程の記述を省略している場合もあります。いずれの場合も法令に則り適切に行動・処置していますが、誤解を招く表現は速やかに修正しますので「お問い合わせ」よりご連絡ください。