単独猟 第20回 “木間”            (鹿) 犬なし / スコープ&ボルトアクション銃

【単独猟のポイントは記事の最後にMEMOをまとめています。本文の太字部分と連動させています】

2021年3月某日 霧雨

前回、何度も獲物を見かけましたが発砲チャンスなし。
次は目の前にきたチャンスをきっちり仕留めます。

猟欲に駆られて焦ってる、ではなくて明確な意思です。


小さな馴染みの山にやってきました。
尾根を越えて、鹿のグループを見かけた広くなだらかに窪んだ谷間へ向かいます。

窪みの手前50mからスニーキングを意識して一切の物音が出ないように(出さないつもりで)進みます。

幸い、山全体が湿っていて葉っぱを踏む音がほとんど聞こえません。

窪みの手前にある小さな丘を前かがみに上ります。
体重を乗せないものの、手を地面に沿えるだけで前かがみの安定感が増すのは不思議です。

地面と水平に目線を並べて、窪みをのぞくために丘から顔を出すと…

正面に小柄な鹿がいて目が合いました。距離15m。
成獣なら即座に逃げ出すところですが、子鹿は「何だコイツ??」という興味でこちらを見ている気がします。

正面の鹿を視界にとらえたまま周囲を見渡すと、林を挟んで、左前方に4~6頭の鹿がいますが見通しが悪くて互いに死角。
正面の子鹿に集中すればよいシチュエーション。

丘のトップに両膝をついて上半身を起こして弾を抜いて装填、鉄砲を構え、スコープ越しに見ると下半身が斜めに沈み込んでいて駆け出す体制に移っています。

静かに呼吸を整えようとした瞬間、横に立っている木に隠れるように駆け出しました。
群れの方に駆け抜けていくと、他の鹿たちも釣られるようにピョンピョンと消えていきました。

最初のコンタクトは見送りです。

あと二呼吸分、射撃までのプロセスを短縮すれば撃てるはずですが、テキパキと動けばそれで逃げるでしょうから難しいです。

走ってる獲物を正確に撃つ自信がないので撃ちません。
撃てばあたるかもしれませんが「発砲音で周囲の獲物が逃げるので無用な発射はしたくない」から派生して「ヒット率を自分に課しているので撃ちたくない」の理由があります。



そのまま5分ほど休憩をとって、鹿が去った方角へ歩きます。
相対した小鹿は明確にわたしを敵視して逃げた感じでもなかったので、グループも遠くまで逃げてはいないかもしれません。

窪みを渡りきり、次の尾根に取り付きます。すぐに次の窪みが見える地形です。
次の尾根が見える場所まで歩いたところでカロリーメイトを取り出し小休憩です。

鉄砲は近くの木に立てかけ、木にリュックを持たれるように岩に腰かけます。休憩中、獲物が見えた時にすっと鉄砲を手に取り、すっと立ち上がれる条件を揃えて休憩です。

土管サイズの木の横で周囲を見渡しながら食べていると、鹿3頭が葉っぱに鼻を突っ込んで餌を探して歩いてきました。


ほぼ正面70~80mに小柄な鹿が1頭。少し離れて1時の方角に親子。計3頭です。
わたしには気付いておらず、少しずつこちらへ寄ってきます。

正面の小柄な鹿は多少木々に隠れていますが、全身が見えるタイミングもあります。
2時の方角まで移動した親子は体の一部しか見えません。

土管サイズの木の右側に位置取りし、立射姿勢で銃身を木に押し付けて正面の鹿に狙いをつけます。
餌を探すために顔を地面に近づけています。ヘッドやネックも見えていますが少し動けば外す気がします。

緩やかな撃ち下ろし。
次弾に余裕があれば2時の方角にいる親子にも構え直す心づもりで正面の1頭に向かいます。

これ以上11時の方角へ進まれると倒れかけの太目の木に隠れてしまいます。
鹿の手前に細い木が二本立っていますが、バイタルまでの射線は通っています。

グルーピングを思い出すと、50m前後なら木の間を通せるはず。
物理的な障害になるような狭さではないので、気持ちの問題です。


バイタルに狙いをつけて、薄く息を吐きます。
左右の木の中央に鹿が来たタイミングで撃つと即倒しました。排莢、装填。

足で一掻き、宙を蹴って動かなくなりました。

横たわっているのが子鹿です。射撃位置から撮影

すぐに2時の方角を向くと、親子は3時の方角に向けて刺さるような足取りで、耳を立て周囲を警戒しながら数歩。
距離50m。

さらに2歩、3歩、歩かれて大きな数本の木に重なりました。
親鹿らしい胴体が木の間から見えていますが、バイタル付近なのか腸が詰まっているお尻側なのか判別できません。
撃てばあたる気はしますが、弾が抜けた場合のバックストップが直接見えません。

親子はわたしの位置が分かってない様子。
手前に向かって来るならバックストップができるので撃てます。
そうでなければ見送りとなるシチュエーション。

静かに見守ります..。

ほどなく、親子の鹿は手前の木々を壁にするように奥へ消えて行きました。
残念ですが現実には一人で鹿二頭を解体するのは重労働。ホッとしたのも事実です。

親子の鹿が重なった木々。奥へ駆けて行ったがわたしに気付いた様子はなかった。

死角など周囲に居残った鹿がいないことを確認して、撃った鹿の許へ向かいます。

近づいてみると、認識していた以上に二本の木は狭かったです。
射撃場の50m立射は手を広げたサイズに収まると分かっているから、撃つ決心がついたのでしょう。実射の練習やっていてよかったです。

※第一種銃猟免許保持者が有害鳥獣対策の従事者として法令に則り駆除したものです

結果論ですが、木間を抜くショットで正解でした。

※第一種銃猟免許保持者が有害鳥獣対策の従事者として法令に則り駆除したものです

倒木は小柄な鹿が潜り抜けるだけのスペースがありました。
そこから先は窪んでいたので、わたしが撃った位置からは地形的に見えなくなったでしょう。運が味方してくれました。
(↓の画像だと鹿の進行方向が下り斜面になっているのが分かると思います)

※第一種銃猟免許保持者が有害鳥獣対策の従事者として法令に則り駆除したものです

今回の弾もDupoです。

解体すると横隔膜に血液が溜まっていたので大きな血管を破ったはずですが、場所は特定できませんでした。
弾のチップが体内に散っているのでダメージが大きいのは間違いないでしょう。

”20番の撃ちやすさ”×”Dupoの殺傷力”
いい感じに組み合わさっていますね。
(と本気で思っていましたが、ちょっと先の記事では違うこといいます笑)

※第一種銃猟免許保持者が有害鳥獣対策の従事者として法令に則り駆除したものです


【MEMO】

・あてる自信がなければ撃たない。
スキート銃でもボルト銃でも単独忍び猟の方針。
最初に行った山が小さかったので発砲すると次の獲物に出会えなくなるリスクがあった。想像だが、撃たずに逃げられた場合と比べ撃って外すと山全体の警戒心が高まるのではないか、外すくらいなら撃たない方が猟果が出せるのではないか、と考えている。

※単独猟始めた2020年8月~この記事を書いてる2021年5月頭までの実績 
 23回出猟、23発着弾、3発失中、1発半矢 → 獲得数19頭
 自信がある場面だけ選りすぐって撃てば、初心者でもヒット率80%超は可能

※巻狩ほとんど経験ないが、わたしはヘッポコ糞タツに違いない笑
 動画観てると自動銃でバンバン撃ってるから全然スタイルが違う


・休憩中は臨戦可能な状態で周囲に注意を払う
「休憩」は意識すればSLLSのSTOPの状態になる。休憩中に獲物に遭遇したり、そのまま獲ったりするケースがある。
適度な休憩は集中力を維持に必要=安全のために不可欠。完全に臨戦態勢のままでは有効な休憩にならない。
すぐに鉄砲を手にとって射撃姿勢に移れる座り方、鉄砲の置き場所、周囲のバックストップの事前確認…など臨戦態勢に速やかに移れる準備をしたうえで、心身リラックスして休憩することが大切。


・二の矢を備える。
今回は備えた二の矢を撃たなかったがそれでいい。何度かに一度、二の矢の備えが有効になる。備えていれば獲れるものがある。


・射撃練習で出したグルーピングを基準にする
「ちょっと狙いとズレてもいいや」という気持ちで撃てない場面で、撃つ判断をするのは自分の立射グルーピングであたると思える時。外すなら撃たない。

 +射撃場の感覚をできるだけ鈍らせない
数ヶ月前に射撃場で撃って50m-100mの距離感やグルーピングを覚えたつもり。でも徐々に忘れる。自宅で据銃練習する時に「この獲物は30mで正面から」「この獲物は50mで木陰から」「この獲物は70mで尾根トップから」など頭の中で距離をイメージして感覚を鈍らせない。

【諸条件】

・鉄砲:ボルトアクション銃20番

・照準:スコープ vixen1-6X24

・弾種:Dupo 

・弾数:1

・距離:目測60m

・獲物:鹿1頭 -バイタル側面

・目的:有害鳥獣対策

※当ブログでは、狩猟と有害鳥獣の駆除で異なる表現を同一に扱ったり暗喩・直喩を用いたりする場合があります。作業工程の記述を省略している場合もあります。いずれの場合も法令に則り適切に行動・処置していますが、誤解を招く表現は速やかに修正しますので「お問い合わせ」よりご連絡ください。

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