2021年6月某日
前回試した流し猟はボウズ。効率的に獲れると聞いていましたが、技術あってこそ、のようです。
山を知るためにも歩く忍び猟に戻します。猟のスタイルが一つカタチになれば、変化をつけて続けられる気がします。
猟期の冬と違って6月中旬の山中は蒸し暑いです。車を降りて、水分食料、解体道具や鉄砲を背負って少し歩くと顎から汗が流れ落ちます。
草木が茂って見通し悪くなり、獲物が捜索しづらくなります。
水分や塩分が多く必要で、体力と集中力が削られ、環境は味方してくれない。
夏の有害鳥獣駆除ならでは、です。
山で活動する人が減るため、獲物が油断しているかもしれません。
(普段から人を見かけないので何も変わらないと思いますが…気休めです)
早朝から山に入り、静かに歩いていてると遠目に斜面を登る鹿。
足場が悪く斜面で体勢が整えられず、倒木に鉄砲を依託します。剥がれた樹皮の段差に銃身を置くため、ほんの一瞬鹿から目を離した隙に枝葉で見えなくなりました。
しばらく待機…。鹿は戻ってきません。
じっと待っているだけで土中から漂う湿気・熱気がまとわりつきます。

荷物おろして、タオルで上半身の汗を拭きあげます。
顔と耳の汗で濡れた電子イヤマフも拭い、気を取り直して出発です。
久しぶりに来た山。ボウズで帰るのはもったいなくてアチコチ歩き回ります。
でも粘っても出会いがない時はどうにもならないもの。下山開始です。
下山開始と言いながら意欲は山の熱気同様に滾っています。集中力は十分です。
出会えないと言っても痕跡はあります。
チャンスを拾う気構えはそのままに、静かに静かに帰ります。

ふと電子イヤマフが、カサリ、カサリと葉っぱの擦れる音を拾います。
乾いた土から根がが露出した斜面をにじり登って、イヤマフを外すと尾根のトップ越し数メートルから聞こえてきます。
肩からスリングを外し、鉄砲を抱えて、息を殺して最後の数メートルを踏みしめて進むと、寝っ転がって毛繕いしている穴熊が目の前に。
最短の挙動をゆっくりと。尾根から出した胴体や頭は動かさない。
弾帯からRedBird competitionをひとつ抜き取り、装填。
ボルトのハンドルは圧をかけるようにジワリと操作する。
距離20m。鉄砲を構えると、穴熊の小さい体が地面の凸凹で隠れて狙える面積が狭い。
確実にあてるため胸を撃つ。
猫が威嚇する姿勢のように全身をΩ型に丸めて歩き出す。
トメるため、排莢、Dupoを装填、もはや静穏に注意を払わない。素早く操作。
直前に撃った胸からずらして腹を撃つと絶命。


※初めて獲った穴熊ちょっと観察..

穴熊は有害鳥獣駆除の報告対象です(農作物の被害が出ています)。
報告用の写真を撮影していると、周辺視野で何かの動きをとらえます。
体を向けると、二頭の猪、恐らく親子が自分のすぐ側にいる。
自撮り棒をそっと置いて、鉄砲をそっと手にとり、そっと装填。
距離10m 見つめ合う。
(妙な言い方だが)殺気を殺して構え..る..その直前に大きな猪が右に駆け出す。
ワンテンポ遅れて、小さな猪が真後ろに振り返って駆け出す。
ヘッドショット狙っていた姿勢そのままに引き金を引く。
レティクルは猪に重なっていたはず…
バキバキ、バキバキという音が一帯に鳴り響きます。
すぐに猪がいた場所まで歩み寄りますが、姿は見えません。
草の茂った下り斜面の先、谷間に沢が流れています。
地面に血糊があります。駆け下りたか転がり落ちたか分かりませんが、斜面を下っているようです。
最初の血糊はすぐに見つけましたが、捜索するエリアを決めるための次の血糊が見つかりません。小さな猪が伏せていたら見つける自信はありません。
地面をチェックしながら、ジグザグに沢の手前まで降りて、場所をずらして、ジグザクに登り返します。半矢なら急いでトメなきゃ!という気持ちで斜面を小走り。
汗が噴き出ます。
再び沢まで降りると、沢沿いの砂地に血糊発見。
斜面にいると思い込んでいた猪は、さらに進んだ沢の中に倒れています。

喜び以上に脱水症状が辛くなっています。
水分が尽きて、沢の水を飲もうかと何度も悩みました。でも今の体調で腹を壊したらそれこそ地獄だ…と踏みとどまりました。
穴熊を回収。沢で自ら冷却されている猪の居場所に戻る頃には頭痛が..。
徐々に日没が迫ってきています。一気に片づけないと…。
自分の体温を下げるため、沢に入り、木陰を選びます。
猪を解体してみるとDupoが背骨にあたっています。逃げ出す前、後ろを向く前にヘッドから逸れて着弾したのでしょう(解体していて、腰骨に向けて弾が走っていたため、正面から着弾したと分かりました)。
正面からヘッドにあてていたら即倒していたはずです。
そうしていたら汗水垂らして捜索せずに済んだ可能性が高いなだから惜しかったな、、なんて考える余裕もありません。
沢で顔を洗って(もちろん猪より上流で..)、リフレッシュします。
自分の身体を捻って、猪から取り出した心臓を平らな岩に置いて、再び身体を猪に向けて作業を再開。心臓から視線を外した直後、視界の外でバシュバシュっと大きな音。
平岩を見やると心臓が消えてる。一瞬、沢に落ちたかとキョロキョロ。
空を見上げると、トンビが心臓を鷲掴みにして飛び去ってました。
30cmも離れていないのに、こちらの意識が心臓から離れた瞬間を狙う野生のハンターにしてやられました。
めげずに解体を進めてヒレ肉とろうとしたら、Dupoでグサグサになっていました。図のように、獲物にあたった後に体内で弾頭の鉄片が散ってダメージを与える、設計思想からして強烈です。
肉を取りたくて使う弾じゃないですね…。

そんなこんなで片づけ終了。
夕暮れ、めまいを感じながら下山して車に戻り、休憩して帰りました。
【MEMO】
安全第一であるべき。
熱中症に限らず、体調不良で単独猟者が人気のない山で倒れた場合、最悪、死ぬでしょう。
自分の体力や体調、天候、解体にかかる時間などが客観視できず、サウナのような夏山で長居してしまいました。鉄砲を引っ込めないまま下山を始めて、道すがら獲るのはやめます。
猟欲に駆られた事故の代表例はガサドンだと思いますが、熱中するあまり倒れても多くの人に迷惑をかけてしまいますね。気を付けます。
【諸条件】
・鉄砲:ボルトアクション銃20番 Savage turkey
・照準:スコープ vixen1-6X24
・発砲:RedBird competition 1発(穴熊に向けた初矢20m)
Dupo 2発(穴熊のトメ矢1発20m、猪に1発10m)
・目的:有害鳥獣対策
※当ブログでは、狩猟と有害鳥獣の駆除で異なる表現を同一に扱ったり暗喩・直喩を用いたりする場合があります。作業工程の記述を省略している場合もあります。いずれの場合も法令に則り適切に行動・処置していますが、誤解を招く表現は速やかに修正しますので「お問い合わせ」よりご連絡ください。
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